RESEARCH

心理学・行動科学の研究を読む

海外の研究論文を中心に、 研究方法・結果・限界を日本語で分かりやすく整理しています。

#質的研究 の研究 15件
臨床心理学 2026 全文解析

重度の自傷行為をする人の家族・近親者が経験する医療との関わり――「私たちが最もよく知っている」

ノルウェーで、重度の自傷行為をする成人を支えてきた親、パートナー、きょうだい15人にインタビューし、医療サービスとの関わりを分析した。参加者は、医療に頼らざるを得ない一方で、本人の状態を長年見てきた自分たちの知識が十分に聞き入れられず、感情的・過干渉とみなされて関与を妨げられる経験を語った。また、本人だけでなく家族自身の疲労や不安、支援ニーズも見過ごされやすいと感じていた。研究は、家族の医療参加には情報提供だけでなく、経験知を信頼できる知識として扱い、家族自身を支援の対象として認識することが関係すると論じている。

感情・ストレス心理学 2026 全文解析

初期キャリア薬剤師のストレス源と対処法を探る:質的インタビュー研究

オーストラリアの初期キャリア薬剤師24人に半構造化インタビューを行い、職場でのストレス経験、仕事上の喜び、ストレスへの対処法を調べた。80件のクリティカル・インシデントの分析から、管理者からの支援不足、現実離れした高い自己期待、医療専門職として尊重されていない感覚が主なテーマとして示された。多くの参加者は、同僚・薬剤師仲間・パートナー・家族との会話、運動や趣味などを通じてストレスに対処していた。患者や地域との肯定的な関わりは、所属感や仕事の目的意識を支える要素として語られた。

健康心理学 2026 全文解析

肝移植前から術後1年までの適応:縦断的グラウンデッド・セオリー研究

本研究は、肝移植を待つ時期から移植後1年まで、患者が主な懸念に対処しながらどのように適応していくのかを、縦断的なグラウンデッド・セオリーによって検討した。適応の中心には「社会的所属の中で生きること」があり、移植前は病気や待機中の不確実性のなかで日常生活の連続性を保とうとする「中断された状況の最適化」、移植後は脆弱性と将来の不確実性を抱えながら安定を再構築する「不確実な現在の管理」として整理された。理解する、受け入れる、適応する、対処する、バランスを取るという5つのカテゴリーは時期を超えてみられたが、その意味や表れ方は変化した。

健康心理学 2026 Abstract解析

「出産したら、私は消えてしまった」:妊娠糖尿病経験女性が語るプライマリケアのフォローアップと生活習慣予防

妊娠糖尿病を経験した女性17人への半構造化インタビューから、出産後のプライマリケアによるフォローアップ不足、健康とウェルビーイングを包括的に捉える支援へのニーズ、デジタル技術を用いた生活習慣管理への慎重な期待が明らかになった。女性たちは、出産後に医療から見放されたように感じており、母親であることと将来の2型糖尿病リスクが健康的な生活習慣の最も強い動機となっていた。

発達心理学 2026 Abstract解析

一緒に歩く:生態学的モデルから見た、オーストラリアの自閉症のある就学前児を持つ親の自然歩行体験

オーストラリアの自閉症のある就学前児を持つ親が、子どもと自然の中を一緒に歩く経験をどのように捉えているかを、ブロンフェンブレンナーの生態学的モデルを枠組みとして調査した質的研究。親たちは、自然の中を歩くことが子どものコミュニケーション、つながり、落ち着きなどの発達的成長の機会になると述べた一方、一緒に歩く際の動きや協調の違いなどの困難も指摘した。

感情・ストレス心理学 2026 Abstract解析

感情日記を通じて感情知能を探る:若年学生を対象とした質的研究

長期化する社会的・政治的・経済的危機の中で暮らすレバノンの青年について、感情日記の分析を通じて、感情の同定と調整のあり方を検討した質的研究。15~17歳の学生145人の日記を分析した結果、参加者の多くは感情とそのきっかけを把握していた一方、感情を適応的に調整することには困難を抱えていた。

社会心理学 2026 Abstract解析

「COVID-19は人を殺す。冗談では済まされない」:南アフリカ・ソウェトに暮らす女性たちのCOVID-19に対する認識と経験

南アフリカのソウェトに暮らす黒人女性がCOVID-19パンデミックをどのように経験したかを、個人、対人関係、地域、社会という複数のレベルから検討した質的研究。女性たちは感染、暴力、孤立、経済的困難への不安を抱えながら家族や地域を支えた。一方、COVID-19に関連するスティグマは人々のつながりを損ない、政府機関への不信の強まりはワクチン忌避と関連していた。

社会心理学 2026 全文解析

地域で暮らす脳卒中サバイバーは孤独をどのように経験するのか:質的データの二次分析

マカオの地域で暮らす脳卒中サバイバーへのインタビュー記録を二次分析し、脳卒中後の孤独がどのように経験されるのかを検討した研究。20人分の記録から、孤独は社会的な所属からの断絶、親しい人とのつながりの不足、方向性・希望・人生の意味の喪失という3つのテーマに整理された。孤独は単に一人でいることや交流の減少ではなく、身体機能、周囲の理解、社会への包摂、自己価値や人生の目的が相互に関連する複雑な経験として示された。

感情・ストレス心理学 2026 Abstract解析

出産への恐怖を乗り越える:女性が望む助産師による関係性を重視した継続ケア

出産への恐怖が強い女性を対象に、妊娠中から出産後まで同じ助産師と関わる継続的ケアについての考えと、分断された標準的な産科ケアの経験を調査した質的研究。女性たちは、よく知る助産師との信頼関係が安心感や指針をもたらし、出産への恐怖を軽減し得ると考えていた。一方、担当者や関わりが分断されたケアは不確実でストレスが多く、感情的苦痛につながるものとして認識されていた。

健康心理学 2026 Abstract解析

妊婦のオーストラリア妊娠期食事ガイドラインに対する認識と利用を探る質的研究

妊婦19人への半構造化インタビューから、妊娠期の食事ガイドラインは十分に認知・利用されていないことが示された。背景には、産科医療提供者からガイドラインを受け取る機会が一貫していないこと、自分で情報を探す際に食の安全性や信頼できる情報の見極めに多くの関心が向くこと、一般的な推奨内容では個々の栄養ニーズに対応できないという認識があり、利用動機が低いことが挙げられた。

社会心理学 2026 Abstract解析

人道支援における社会科学の役割:コミュニティ参加と脱植民地化のアプローチ

本論文は、人道支援に社会科学を組み込むことが、コミュニティ参加、能力構築、地域化、そして人道支援の脱植民地化にどのように関係しうるかを検討した。国際的な人道支援実務者へのインタビューとグループ討議から、社会科学の全体論的・関係重視の方法には可能性がある一方、危機対応における迅速性や標準化された成果指標との緊張が示された。脱植民地化には参加型ツールの導入だけでなく、資源と意思決定権を地域コミュニティへ移すことが必要だと論じている。

発達心理学 2026 全文解析

子どもは過体重・肥満をどう理解するのか:チリにおける質的研究

チリ・サンティアゴのプライマリケア診療所で「過体重」または「肥満」と分類された10~12歳の子ども18人にオンライン半構造化インタビューを行い、健康、成長、体重の理解を調べた。子どもたちは医療用語をそのまま使うよりも、「少しぽっちゃり」を意味する日常的で柔らかな表現を用い、身体の大きさを見た目、身体感覚、他者からの評価と結びつけて語った。診療所での測定や分類は、子どもによっては自分の身体を「普通ではない」と意識する契機となり、羞恥や不快感につながっていた。一方で、体重の状態を成長によって変化する一時的なものとして捉え、医療的ラベルを自分なりに解釈・交渉する姿もみられた。

健康心理学 2026 Abstract解析

ウガンダで高度進行HIV疾患の成人が退院後にHIVケアへつながる際の障壁と促進要因:COM-Bモデルに基づく質的研究

ウガンダ東部の病院から退院した高度進行HIV疾患の成人が、退院後に外来HIVケアへつながる際の障壁と促進要因を、患者と医療従事者へのインタビューから調べた。身体的な衰弱、手続きに関する知識不足、交通費や距離、スティグマなどが障壁として挙げられた一方、退院前の抗レトロウイルス療法(ART)の開始・再開、ピアサポート、介護者への病状開示などが促進要因として報告された。

産業・組織心理学 2026 全文解析

職場におけるメンタルヘルス・ファーストエイド:英国労働者の経験に関する再帰的テーマ分析

英国の職場で導入されたメンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)について、従業員、支援を受けた人、メンタルヘルス・ファーストエイダー、管理職計24人へのインタビューを分析した研究。参加者は、MHFAの目的や役割が曖昧であること、支援の有効性や組織の本気度への懐疑、メンタルヘルスの開示後に職場の人間関係や昇進・キャリアに影響が及ぶ懸念を語った。MHFAは、組織全体が従業員のウェルビーイングに取り組む環境の一部として実施される場合に、より受け入れられやすいと著者らは解釈している。

健康心理学 2026 全文解析

初回心筋梗塞後の心臓リハビリテーション参加を左右する患者の体験

初回急性心筋梗塞を経験した患者が心臓リハビリテーションに参加する際の体験と、それを促進・阻害する要因を、9件の質的研究から統合したレビュー。分析の結果、患者は「以前の自分」から「新しい自分」へのアイデンティティの変化を経験し、不安や運動への恐怖、経済的・仕事上の負担などが参加を妨げる一方、リハビリテーションで得られる身体的自信、家族や同じ病気を経験した仲間からの支援、専門職による具体的な説明と励ましが参加を支えていた。